物理よりな微分幾何② 接続と共変微分
前回は、ベクトルの定義をして、ベクトル場やテンソル場などは、ベクトル束の切断である、との話をしました。続いては、共変微分についての数学的表現を話していきます。
最初に共変微分の定義をのべて、そこから、物理での共変微分とそれが一致することをみていきます。
まず、について説明します。もう少し一般化してについて考えましょう。この切断は
とかけます。ここでであるので、は値形式と呼ばれます。これらをとかいておきます。また、とします。これはとかいたほうが分かりやすいかもしれません。つまり、値形式は成分が形式のベクトルと表せます。また、線形性とライプニッツ則は微分であるためには満たさなければいけません。一般に数学では、線形性とライプニッツ則みたす写像を微分といいます。
に対し、はに値をとる1次微分形式なので
と展開できます。この展開係数が物理でよくみる形の共変微分になります。座標変換を考えてみるとになるので、に注意すると、成分についてと変換されることがわかります。確かに共変微分が共変的な変換を受けていることが分かります。はライプニッツ則から
とかけます。ここで、であり、となるので、は値1形式になります。このため、をで再度展開するととかけます。は1次微分形式の行列とみることができ、これを接続、または接続形式といいます。(共変微分のことを接続という本もあります)接続を用いると共変微分はとかけます。物理では基本的に基底を明示しないで、成分だけで議論をすすめるので、共変微分をのようにかいています。また、と展開すればともかけます。は偏微分のことですが、の基底と区別するためとかいています。また、は微分形式の添え字と、行列の添え字の計3つの添え字をもつ量であり、これはクリストッフェル記号が添え字を3つもつことに対応します。
共変微分と接続の変換性について見ていきましょう。と変換することを考えます。まず、共変微分について
よりが成り立つちます。これをとかくことがあります。また、接続はの2式がそれぞれなりたつので、見比べてという変換を受けます。このように、接続の変換には変換関数の微分が影響してきます。変換の1項目と2項目で微分の階数がことなってしまうため、接続は幾何学的な量で表すことが出来ません。つまり、接続は基底を定めて初めて表現できる量になります。このことは、あとで主束というものを考えるモチベーションとなります。また、このため、にはオーバーラインをつけていません。続いて、の共変微分から、双対束の共変微分を導入します。と、に対し、の共変微分を
を満たすように定めます。の双対基底をとします。つまりとします。これを用いて、と展開すれば、内積はと表せます。よってが成り立ちます。また、の接続を、の接続をとするととが成り立つので、見比べるとを得ます。また、とのテンソル束の共変微分はをと展開すればとなります。添え字をもどすととかけます。
最後に、一般相対性理論の共変微分の式を導いておきます。相対論では、つまり、反変ベクトル場の共変微分をクリストッフェル記号を用いて
と表します。これは接続をと表していることを意味します。まずは、クリストッフェル記号の変換を考えてみましょう。基底はと変換されるので、接続の変換式はとなります。さらに、とと展開すればとなるのでまた、共変ベクトルの共変微分はに対してが成り立つのでとなります。さらにテンソル場についても、となることがテンソル束の接続を考えれば分かります。残ったスカラー場ですが、スカラー場はの元で、これは直積束の切断になります。直積束に対しては接続は自明なのでとなります。このように、一般相対性理論をベクトル束の言葉で翻訳し直すことができます。今回はここまでにして、次回は共変外微分と曲率を解説します。