n人でじゃんけんするときの回数(改良編)
以前こんな問題について書いた。
c-and-a.hatenablog.com
問題設定
人でじゃんけんを行い、あいこであればもう一度、勝ちが出れば、勝った人たちでまたじゃんけんを行う。これを最後に一人出るまで繰り返す。優勝者がでるまでに行ったじゃんけんの回数の期待値をとする。を求めよ。なお、としておく。
簡単に言えば、みんなでじゃんけんをやったとき、優勝者を決めるのには何回必要かを考えた。これはなかなかに骨の折れる問題でとても解くのが難しく、前回の解答はとても満足のできる形にならなかった。
今回、もっとすっきりした解が求まったのでそれを紹介しよう。
前回と共通するところまでは飛ばそう。
回数の期待値の漸化式は
とかけるのだった。これの導出は上のリンクから飛んでみて欲しい。まず、母関数を考えるのは同じで
とかく。便宜的にとした。前回と同じようなトリックを使うと
よりが成り立つ。ここではを左辺に移項し、のうち一つはシグマに吸収させている。これを母関数に代入し整理していく
\begin{align*}
F( x) & =\sum ^{\infty }_{n=0}\frac{E_{n}}{n!} x^{n} =\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{E_{n}}{n!} x^{n}\\
& =\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{1}{n!}\frac{1}{2^{n}}\left\{3^{n-1} +E_{n} +\sum ^{n}_{k=0}\begin{pmatrix}
n\\
k
\end{pmatrix} E_{k}\right\} x^{n}\\
& =\frac{1}{3}\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{1}{n!}\left(\frac{3}{2} x\right)^{n} +\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{E_{n}}{n!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n} +\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{1}{n!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n}\sum ^{n}_{k=0}\begin{pmatrix}
n\\
k
\end{pmatrix} E_{k}\\
& =\frac{1}{3}\left( e^{3x/2} -1-\frac{3x}{2}\right) +F( x/2) +\sum ^{\infty }_{n=0}\frac{1}{n!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n}\sum ^{n}_{k=0}\begin{pmatrix}
n\\
k
\end{pmatrix} E_{k}
\end{align*}
式変形ではを使って、和の開始をずらしたりしているので注意してほしい。
3項目は
\begin{align*}
\sum ^{\infty }_{n=0}\frac{1}{n!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n}\sum ^{n}_{k=0}\begin{pmatrix}
n\\
k
\end{pmatrix} E_{k} & =\sum ^{\infty }_{n=0}\sum ^{n}_{k=0}\frac{1}{( n-k) !}\left(\frac{x}{2}\right)^{n-k} \cdot \frac{E_{k}}{k!}\left(\frac{x}{2}\right)^{k}\\
& =\sum ^{\infty }_{n=0}\sum ^{\infty }_{k=0}\frac{1}{n!}\left(\frac{x}{2}\right)^{n} \cdot \frac{E_{k}}{k!}\left(\frac{x}{2}\right)^{k}\\
& =e^{x/2} F\left(\frac{x}{2}\right)
\end{align*}
と簡約できるので、最終的に
先に解答の方針を示そう。と上の式の右辺の3項がそれぞれ
と展開できるとしよう。このときとなるので、の係数を比べてとなるのでを得る。については後で計算するが、なので、としてよい。そして
\begin{align*}
F( x) & =\left( 1-e^{x}\right) f( x)\\
& =-\sum ^{\infty }_{n=1}\frac{1}{n!} x^{n}\sum ^{\infty }_{m=1}\frac{a_{m}}{m!} x^{m}\\
& =-\sum ^{\infty }_{n=1}\sum ^{\infty }_{m=1}\frac{1}{( n+m) !}\begin{pmatrix}
n+m\\
m
\end{pmatrix} a_{m} x^{n+m}\\
& =-\sum ^{\infty }_{n=2}\frac{x^{n}}{n!}\sum ^{n-1}_{m=1}\begin{pmatrix}
n\\
m
\end{pmatrix} a_{m}
\end{align*}
であるのでととかけるわけだ。
あとはを求めていくのだが、まずは項ごとに考えていく。まずは
がすぐに分かる。次に、ベルヌーイ数の生成母関数を用いるとベルヌーイ数はと定義されるのでだけ、分けて書くととなる。最後にであったのでである。のTaylor展開はベルヌーイ数を用いてとかけるのでとなる。よってとなり、確かにであり、ではと分かる。よって求めたかった期待値はである。小さい値について計算すると
と正しい値を出力してくれる。Mathematicaを使うと、なんかも計算できて、ちゃんと有理数の値も分かるのだが、分子と分母が巨大すぎて書ききれないので、近似値をかくとである。つまり、100人で勝ち残りじゃんけんをすると、平均して135,520,394,148,146,518回もじゃんけんを行う必要があることが分かる。これでは、1秒に1回じゃんけんが出来たとしても、43億年程度かかってしまう計算になる。これは地球の年齢45億年に匹敵する。また、あと3人増えただけで、つまり、103人では、かかる時間は145億年になり、宇宙の年齢を超してしまう。勝ち残りじゃんけんが如何に非効率かがとても分かる結果になった。